ロードバイク自由研究 感覚の数値化 

理科好きエンジニアが自転車を自然科学で考える

タイヤの自然空気漏れ

自転車タイヤの空気圧は、ロードバイクの場合、1週間程度ではっきり体感できるくらい(1bar以上)に低下することがよくある。ブチルチューブではなく、ラテックスチューブの場合は、1晩で体感できる。今回は、このような自然空気漏れの話。

 

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自然空気漏れは、ゴムの気体透過性が大きく関わっている。気体が高圧側から低圧側、つまり、タイヤの空気室から外側へ出ていく時には、気体がゴムに溶け込み、ゴム中に拡散し、飽和状態になったら、外側に出ていくということが起こっている。例えると、ゴムを乾いた雑巾、気体を水とすれば、雑巾に水がしみ込み、水が雑巾中に行き渡って含み切れなくなったら、水が漏れるという流れ。

 

ちなみに、自動車用チューブレスタイヤの場合は、リムとビードの隙間から空気がよく漏れやすいと思われる方が多いが、ほとんど漏れていない。タイヤ内部にある繊維間は空気が通りやすいので、繊維間はゴムをしみ込ませている。自転車タイヤの場合も、リムとビードの隙間からのエア漏れは通常はないはず。シクロクロスで低圧でブリブリ言わせる走り方は漏れるが。繊維間に十分にゴムをしみ込ませられないから(確実に、しみ込ませると重くなって、転がり抵抗やしなやかさが低下するから)、シーラントを使うのかな?

 

気体透過性は、ゴムの種類や気体の種類によって異なる。この性質は、ブチルゴム・窒素の時に小さく、ブチルゴム・酸素の場合は3倍くらいになると言われている。ブチルゴム・二酸化炭素の場合は、ブチルゴム・窒素の時の10倍強。ブチルゴムがラテックス(天然ゴム)になると、それぞれ15~30倍にもなる。さらに、温度も関係しており、25℃から50℃になると、2~6倍と言われている。また、ゴムの厚みが薄いほど、透過しやすい。

 

同じブチルチューブでも、原材料はブチルゴム単体ではなく、強度や加工性能を持たせるためにカーボンやオイルなど色々な物質が混ざっているので、これらの物質によっても気体透過性は異なる。ラテックスチューブの場合も同じだ。

 

私は、小さいゴム分子の間を、気体分子が抜けていくから、小さい気体分子の方が抜けやすいと思っていたが、そうではないらしい。窒素分子より、二酸化炭素分子の方が大きいが、窒素分子の方が抜けにくいので。水と油は混ざりにくい性質があるのと同じような原理があるらしいが、ここは私も専門外なので分からない。

 

ところで、空気は、窒素が約80%、酸素が20%で構成されている。二酸化炭素は1%にも満たない。タイヤに空気を入れると、酸素の方が抜けやすい性質があるので、時間が経つと窒素濃度が高まっていく。空気が抜けた分、空気を補充しても、どんどん窒素濃度が高まっていく。窒素は抜けにくいので、時間が経つにつれて、空気漏れしづらくなっていく。

 

昔?今も?、窒素充填がガソリンスタンド等で流行っていたが、そもそも空気中には80%の窒素があるし、どんどん窒素濃度は高まっていくので、わざわざ高いお金払って、窒素充填する意味はないでしょう。

 

注意したいのが、携帯のCO2ボンベ。二酸化炭素は空気漏れが速い。私も出先でチューブ交換して、CO2ボンベでタイヤ圧を上げると漏れるのが速いと感じた経験がある。またパンクか?と思うほどの速さ。家に帰ったら、二酸化炭素はできるだけ抜き切り、空気充填しましょう!