ロードバイク自由研究 感覚の数値化 

理科好きエンジニアが自転車を自然科学で考える

慣性モーメントが小さいと速く転がる

単3乾電池(重量22g)とガムテープ芯(重量22g)を同時に転がすと、単3乾電池の方が速く転がる。何秒速く転がるか測定しようとしたが、時間の都合上、1秒程度で転がりきる坂道しか作ることができず、まともに測定できなかったので、お許しください。

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単3乾電池の方が速く転がる理由は、空気抵抗も少しはあるが、慣性モーメントが小さいから。慣性モーメントとは、大きいほど一定の回転数を保とうとする性質がある。逆に、小さいほど回転数が変化しやすくなる性質がある。だから、慣性モーメントの小さい乾電池は、慣性モーメントの大きいガムテープよりも速く転がっていた。

 

慣性モーメントの考えを入れて坂道を転がり落ちることを考えるのは、少し難しい。だから、高校物理や大学入試では扱わない現象。斜面の物体は、転がらないものとして考えるために四角形で描かれている。摩擦なく、空気抵抗もなく、斜面を滑り落ちる時は、重いものも軽いものでも同じ速さで落ちていく。しかし、転がる時は、慣性モーメントが効いて、回転させるのにエネルギーが費やさられるので、その分、ゆっくりと転がる。そして、慣性モーメントが大きいものほど、ゆっくりと転がる。

 

転がり落ちる時の計算は少し難しいので、次の機会に回して登り坂での慣性モーメントの影響を計算してみた。自転車で登り坂を進む時、ホイールやタイヤが回るので、その分の慣性モーメントが効いて、よりパワーが必要になる。

 

3分間ヒルクライム(1000mを時速20km/h)での短縮時間は下図の通り。タイヤの前後重量を0.6kg、ホイール前後重量を1.8kg、それ以外の自転車部品(慣性モーメントを考慮しない部分)の重量を6kg、人を60kgとした。この時、空気抵抗やタイヤの転がり抵抗は無視。ちなみに勾配度によらず、下図の結果になる。

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慣性モーメントを考慮すると、3.9秒遅くなる。タイヤやチューブの1本分の50g軽くすると、前後で100g軽くなり、慣性モーメントの効果で200g軽くなる。慣性モーメントは外周にあるほど効果が大きい。外周端100gの軽量化は2倍の効果になる。200g軽くなると、0.5秒速くなる。ホイールを前後で400g軽くすると、慣性モーメントの効果で約600g軽くなる。ホイールの場合は、外周端が軽くなるとは言えないので、ざっくり1.5倍の効果とした。タイヤの軽量化と合わせれば、2.1秒速くなる。さらに、慣性モーメントが関係ないフレームやハンドルなどを合計1000g軽くすると、4.6秒速くなる。

 

ついでにヒルクライム時の必要パワーも計算。下図は5%勾配の時、その下図は10%勾配の時。この差を小さいと見るか、大きいと見るかは、人によって違うと思う。個人的には、2倍の軽量化効果があるタイヤ周りは軽量化に特にこだわって、ホイールは1.5倍の軽量化効果なので、そこそここだわって、それ以外は無理しない範囲がいいかなと思う。トイレで出し切るのが、一番お得かな。

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